複雑系ネットワークの研究とは
近年,複雑系ネットワーク(Complex Networks)の研究は,物理学を初めとして,化学,生物学,経済学,情報学など幅広い分野で注目されている.これは,ネットワークというモデルが,ノード(点)とエッジ(線)という要素だけで,それらの定義次第で,事象に内在する様々な面を表現できるためである.例えば,物理的な関係性に着目し,道路を交差点をノード道をエッジとした場合には地図を描くことにつかえ,その一方で,車の流量や移動(交差点での分岐割合)など認知的関係性に着目し,右左折の多い交差点をノード,そのノード間の流量が多い経路をエッジとした場合には,渋滞予測への応用が期待できる.
このように,事象を要素と関係性から系として捉えることで,その系がもつ特性を解明しようとする試みが「複雑系ネットワーク」もしくは「ネットワークの科学」と呼ばれる分野の研究だと考えている.
このようにネットワークを用いて系全体を捉えようとすることで,バラバシ(Barabási)らが定義したスケールフリー(Scale-Free)のように,大手航空会社の航空ネットワークがハブ(hub)とスポーク構造をもつに至った説明を可能とすると同時に,格安航空会社による小型中型航空機を用いた地方路線を主体とした航空ネットワークの実現性も説明できる.前者は,航空会社側の視点にたった効率の最大化を前提とし顧客の利便性を最大とするために大型機を選択することになり,後者は,顧客の視点に立った効率の最大化を前提とし航空会社側の効率の最大化のために小型機の選択することになる.また,航空ネットワークの構造は,国家,社会や経済の有り様にも影響を与え,ひいては自身の構造にも何かしらの影響を与える.という説明もネットワークという視点を意識することで初めて可能となるといえる.このような「ネットワーク」という視点は,それぞれの分野にて遍在していた考え方ではあるが,「複雑系ネットワーク」とは,様々な場所に遍在していた視点を軸にまとめたものということもできる.
この複雑系ネットワークの研究を大きく分類するならば,以下の3種類に分けられる.
- ネットワーク分析
- ネットワーク生成モデル
- ネットワーク上の現象の分析
以下,この分類に従って,現在行なわれている研究をいくつか取り上げることで,研究を概観する.
関連研究の概要
ネットワーク分析
ネットワーク分析は,その対象を何にするか,そして,何を導き出すのかが主な研究要素となる.以下,分析対象を中心として研究を分類する.
- Web構造
- 生物的現象
こられの研究で課題とされることは,得られた知見が実際にどのように応用できるのかが重要と考える.
ネットワーク生成モデル
ネットワーク生成モデルは,いわゆるスケールフリーネットワークやスモールワールドグラフが有名であるが,もっとも基礎となるのは正則ネットワークとランダムグラフといえる.まず,特定の構造的特徴をもつネットワークを生成することを目的としたモデルから列挙する.
- Scale-Freeネットワーク
- BA-model - model A
- CNN-model
- Small-World network
- Random Graph
- Bernoulli random graph distribution
- dyad-indepandence with their p1 model
- Markov random graphs
- Exoinential random graph models: p* models
- 正則ネットワーク()
広義では,次数分布がベキであるネットワークは Scale-Free ネットワークと呼ばれるが,最近では,現実に存在するネットワークのほとんどがベキ分布となることが知られているため,ベキ分布のみでは特別な意味を持たなくなりつつある.
scale-free ネットワークを生成することを目的としたモデルは多数提案されており,下記にそのなかでも代表的なものを列挙する.
- model B
c.f. wikipeda: BA-model
ネットワーク上の現象の分析
- コンピュータウィルスの拡散
- DDos対策
- Bozz Communication(口コミ)
- ネットワーク外部性
- 地域通貨と経済?
- SIR model:
伝染病の拡散現象などを対象としたモデル.主に,個体は格子空間上に配置され,そこをランダムに動作する.病原体に感染した個体と未感染の個体とが接触することで病原体の拡散を観察する.この手法を用いる対象としては,個体の移動パターンを限定することで,地域の感染経路を予想する場合と,逆に感染経路がわかっている状況において,病原体のキャリアを発見する場合とがある.
SIR model の関連研究
マルチエージェント分野における複雑系ネットワークの研究
ネットワーク上のゲーム(Graph Game)
関連ある学会,研究会や国際会議など
- Sanbelt
- Autonomous Agent and Multi-agent System
- International Workshop on Agent-based Approaches in Economic and Social Complex Systems (AESCS)
研究会
- 『新ネットワーク思考 世界のしくみを読み解く 』 アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳)
- 『スモールワールド・ネットワーク 世界を知るための新科学的思考法 』ダンカン ワッツ (著), Duncan J. Watts (原著), 辻 竜平 (翻訳), 友知 政樹 (翻訳)
- 『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』 マーク・ブキャナン (著), 阪本 芳久 (翻訳)
- 『スモールワールド ネットワークの構造とダイナミクス』 ダンカン ワッツ (著), Duncan J. Watts (原著), 栗原 聡 (翻訳), 福田 健介 (翻訳), 佐藤 進也 (翻訳)
- 『複雑ネットワークの科学』 増田 直紀 (著), 今野 紀雄 (著)
- 『「複雑ネットワーク」とは何か複雑な関係を読み解く新しいアプローチ 』増田 直紀 (著), 今野 紀雄 (著)
- 『SYNC』 スティーヴン・ストロガッツ
- 『渋滞学』 西原 活裕 新潮社
- 『ネットワーク分析 何が行為を決定するか』安田 雪
- 『実践ネットワーク分析 関係を解く理論と技法』 安田 雪
- 『競争の社会的構造構造的空隙の理論』Ronald S. Burt, 安田 雪
- 『社会ネットワーク分析の基礎 社会的関係資本論にむけて』金光 淳
複雑系ネットワークに関係する研究発表論文
- 中途半端でリリース 2007.4.29
- 作成開始 2007.4.28